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2014.05.01発行

勝手に読書

vol,12

勝手に読書伝説

Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~

Special Interview

髙野洋・菊地昭夫

内科医・八雲響を主人公に、瞬時に的確な判断を必要とされる災害医療の現場で活躍するDMATを描く「Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~」。“命を繋ぐ”というテーマに真摯に対峙する医療ドラマはいかにして作られるのか。原作者の髙野洋先生、作画者の菊地昭夫先生に語っていただきました。

Profile

たかの・ひろし/まんが家として、社会問題と生命倫理を問う医療コミック「国境を駆ける医師イコマ」を手掛けるほか、まんが原作者として、緻密な取材を通して様々な作品を担当。

きくち・あきお/まんが家。近藤史恵・作「サクリファイス」、宮部みゆき・作「ぼんくら」などの本格小説のコミカライズからギャグ作品まで、多岐にわたる作品を執筆。2010年より「Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~」の作画を担当。

想像力だけで作るわけにはいかない

Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~

気道確保のため、安全ピンを使っての応急処置。実際の事例をもとにしたエピソードだという。

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――髙野先生が原作を作られる上で意識されているのはどんなことですか?
髙野 話の大きな流れは担当と一緒に考えていくのですが、細部のエピソードや展開をいろいろ考えていくときに、現実と乖離しすぎないようにすることですかね。現場で響たちに突飛な行動を取らせて、あとで監修の先生方にダメ出しをされることのないよう、いろいろな資料にあたったり、下準備を済ませてから話を作っています。ここがこれまでにやってきた作品と大きく違うところですね。想像力だけで作るわけにいかない難しさを感じます。
――監修の先生方からのアドバイスやご指摘で印象に残っていることはありますか?
髙野 そうですね…第1話で安全ピンを使って気道確保するエピソードがあるのですが、あれはDMATの研修を取材させていただきに伺ったときに、特殊な事例として佐々木先生がスライドで見せていたものなんです。そのときに、こういうことをしなくてはいけない状況があるんだということを痛感しました。衝撃も受けましたし、興味深くも感じましたね。
――作中、安全ピンを使った気道確保のほかにも、足りない医療資器材をその場にあるものを代用品として治療するインプロビゼーション(即興医療)がたびたび登場しますが、あれはすべて実例があるものなのでしょうか。
髙野 どれも監修の先生方からアイデアをいただいたり、海外含め実際の治療で使われたものです。
――では、これまでのエピソードで思い出深いものはなんですか?
髙野 コミックス3巻と4巻をまたいだエピソードで、交通事故に遭った家族で唯一生き残った母親が自分より子どもを救ってくれなかったことを責めるシーンが出てくるのですが、キツいシーンだと思いましたし、丁寧に描かなくては、とも思ったシーンでした。
Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~

大岩に足を挟まれてしまった瀕死の男性を救うため、響は片足の切断を選択。

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――菊地先生はいかがですか?
菊地 コミックス5巻の、響の妹が結婚式を挙げるエピソードで、新郎の友人が大岩に足を挟まれて切断しなくてはならなくなるところですね。なかなか監修の先生方からOKが出なくて、難航したんです。
――どういったところでNGが出ていたのでしょうか。
菊地 足を切断しなければならないほどの事案がまずそうないこと、それから、現場では足を切断することをよしとはしないので、そういうところですね。そうせざるを得ない状況になるよう、外堀をしっかりと埋める必要があって、そこがなかなか足りなかったのだと思います。切断すると決めた響の判断が正しいものでなくてはならないので、そこにとても苦労した記憶があります。
――響の選択にもそう決断しなくてはならなかった状況にも、とても納得がいったのですが、その回の最後に、院長が報告書を読んで「本当に切断しか選択はなかったのか」と心の内で問いかけるシーンがあります。それが衝撃的でした。災害医療に関わる方は、考えて考えて決断した最善と思われる選択を、さらに踏み込んで考えなくてはいけないのか、と。命が救われて安易にほっとしていたところに冷や水を浴びせられたようで、なんて厳しい世界なんだろうとあらためて思いました。あの1コマの衝撃がとても大きくて。
菊地 そう感じていただけたなら、とてもうれしいです。
髙野 あれは、佐々木先生に助言をいただいて付け加えたシーンだったんです。やはり必要なシーンだったのだと、今の話をお聞きして再認識しました。
菊地 ひとりの命が救えたからいいわけじゃないんだ、という厳しい状況や事例はたびたび作品の中に登場するんですが、だからこそ丁寧に描かなきゃいけないと思うんですね。デリケートなことを題材にしているので、正直描くのが怖い部分もあります。どこまでなら描いていいのか、触れていいのか、その線引きがとても難しい。担当さんと髙野さんが話し合われたあと、それを絵にするにあたって僕と担当さんの間で打ち合わせがあって、そうやって何度も意見を交わしていくことで、描けるギリギリのラインを見つけているんだと思います。

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『Dr.DMAT』を作るチーム

頂上はゴールではなかった

Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~ コミックス情報

  • Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~(1)を読む
  • Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~(2)を読む
  • Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~(3)を読む
  • Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~(4)を読む
  • Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~(5)を読む
  • Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~(6)を読む

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©髙野洋・菊地昭夫/集英社

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