作品内容
第1句集「ひびき」刊行から10年。「人生の下り坂は山の端に沈む太陽のように転がり落ちて、体力も記憶力も劣化の一途をたどるばかり」の一文ではじまる「あとがき」には最愛の妻との死別が綴られ、一時は川柳から離れたほど埋めきれない著者の孤独が滲み出ている。
いつしか自分をさらけ出し、川柳に吐くことを再開した著者は、一日に一句を思いそれが山となった頃、川柳を通じての他者との響き合いを求め、人生の輝きを取り戻した。「2008年の章」から「2015年の章」までの8年間の魂の軌跡。
幸せにすると確かに言ったはず
晩酌に目刺しと妻のある平和
訳もなく泣いてレモンの味を知り
一歩前照らした妻の常夜灯
さよならをしたのに妻はいつもいる
花の名が知りたくなって墓参り
人生を騙し続けた万華鏡
にんげんに差をつけたまま日が暮れる
真ん中に母さんがいて丸くなり
夕やけの色になりたいだけである
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