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文字でもエロい!ギリギリの倫理観で溺れる…!?ダークなBL小説特集!

活字中毒なBL民のみんなたち、お待たせしましたーっ! ついに来ましたBL小説特集!繊細かつ大胆な「ことば」で創り上げられた世界には、マンガ作品とはまた違った独自の魅力がありますよね。今回は時間を忘れて沼りたくなる「ダーク」な小説の特集です。薄暗くてビターな物語にみっちりと詰まった悲劇に陰謀と確執、そして愛憎入り混じったクソデカ感情――。 文字で読むから妄想がはかどりすぎて余計にエロい、超絶ハードなHシーンも盛りだくさん。そんな綺羅星のような名作揃いの中から、全力で推せるこの4作品を見てくれたまえ。……面構えが違う!

  • 空

おぞましい因習の悪夢!過去の記憶が導いた運命の恋

ポイント

物語の主人公は、異母弟の泰人を虐待する実母から庇い慈しむ心優しい少年・七緒。彼の母の仕打ちは確かに酷いものですが、大人の目線で見れば彼女もまた追い詰められた悲しい女性でした。主人公カプだけでなく、物語を形作る人間模様までが多重的な人物造形によってていねいに描かれるのは、小説作品ならではの醍醐味なのかも。
やがて成長した泰人に、七緒は兄弟のそれとは違った熱愛を打ち明けられます。来ましたよ「健気な可愛い弟がいつの間にかすっかり雄みを身につける」大好物なシチュエーションが。しかし兄弟推し的に優勝したのもつかの間、冒頭から気になっていた奇妙な伏線が不気味な脈動を始めてしまうのです。
泰人の気持ちを受け入れた頃から、七緒は忌まわしい淫夢に苦しめられるようになります。山奥の古いお堂に監禁され見知らぬモブ男どもに体をまさぐられる恐怖を、現代に生きる普通の大学生が毎晩味わうなんて……文字で読むだけでもきっつい。恋人が出来たばかりならなおの事、しんどさは無限のはずです。作者の容赦が……容赦がない! 明らかにこの夢の意味を、何かを知っているくせに隠そうとする弟の態度ももどかしくて、焦れながら次頁をスワイプする指が止まりません。恐ろしいのに不思議とどこか懐かしい、土と草の匂いまでを生々しく感じさせる見事な語り口に惹き込まれてしまうのです。
本格謎解きミステリーとしてもがっつりと楽しめるこの作品。最後まで駆け抜けた瞬間の、ドーパミン満ち溢れるゾクゾク感を是非とも味わってみて!

 

愛しているのか、憎いのか。無いものねだりの嫉妬と渇望!

ポイント

主人公の斎木と、生まれつき心が成長しない双子の姉・朋。鬱陶しいきょうだいがよりによって、渇望したけれど得られなかった絵の才能を持っていたとしたら。しかも底抜けの愛情と優しさを向けてきたら……。選ばれた存在とのあまりの差に竦み憎んでしまったとしても、斎木が心の底からの悪人なのだと断じる気にはなれません。彼の外見はとても美しいけれど、それ以外は「普通」だっただけなのかも。
きょうだいの幼なじみである神成もまた、朋と同じように芸術の神に愛された存在でした。神成は朋に優しく接する一方で斎木に恋い焦がれていたのですが、やがて小さなきっかけから、三人に大きな悲劇が起きてしまいます。朋は命を落とし、大人になった斎木は逃げ出すように都会へと出て、グラフィックデザイナーとして働くことになりました。
やがて画家として名を成した神成と再会した斎木は、隠してきた過去の秘密を質にした神成に脅されます。屈辱的なセックスを強要される段ではまだ、萌えよりつらみがきつい……! 斎木が神成を妬む醜い気持ちに苦しみ続けているのと同様に、神成もまた斎木への報われない想いに打ちのめされ続けていました。神成の恋心すら、卑屈な斎木にとっては苦しみでしかないというしんどさよ。神成に心身ともに追い詰められる斎木ですが、彼は彼で、死んだ人間の姿が見えるという異能を持っています。いつも彼の横に見えている霊となった朋は、一体何を思うのでしょうか。
優れた才能に圧倒された時、称賛と共に嫉妬し悔しくなる気持ちもまた、誰にでも起こり得る人間らしい感情といえます。何かの形で創作に携わりものを生み出す人にとっては、もしかしたら心を抉られる作品かもしれません。でも、だからそうしたあなたにこそ、是非とも斎木の運命を最後まで見届けてあげてほしいと思うのです。

 

妄執の檻に囚われて――。愛に狂った弟の危険な罠

ポイント

出来の良い弟・達也を偏愛する母から遠ざかるため、実家を離れていた大学生の文人。一緒に暮らしていた祖父母が亡くなり実家に戻ることになりますが、母と違って彼に優しく尽くしてくれる達也の存在は救いになるのかと思ったら……そんなことは無かったぜ。
子どもの時から兄にべったりだった弟・達也の異様な執着は、彼が兄よりずっと大柄な高校生となった今、ますます拍車がかかる一方。冒頭から文人の語り口に感じていたチクチクした違和感は、やっぱり気のせいではありませんでした怖い! そんな予感当たらないでいいのに!
心の底から懐いてくれる(ように一見見えている)弟の言動から感じる、どうしようもない違和感の正体とは。訓練されたBL民なら即お解りの通り答えは熱烈ラブなのですが、この愛は他とは一線を画した異様な熱を孕んでいました。兄弟BLの禁忌的なドキドキというには薄暗すぎる悪い予感は、坂道を転げ落ちるように過激化する達也によって、恐ろしい現実と化してしまうのでした。
一つ屋根の下、すぐ近くに両親がいる風呂場で兄を強引に犯したことを皮切りに、達也の行為はエスカレートを続けます。手心なしの狂った愛情と独占欲によって心身を食らい尽される文人ですが、彼にとって何より恐ろしいのは犯される行為そのものよりも、強めの幻覚に酔ったかのような達也との、話の通じなさなのかもしれません。
弟のガチな病みっぷりにはドン引きせざるを得ない一方で、「どうしてこうなった」という因果はきちんと提示されています。だからこそ、読み進めるごとに新たな不安に苛まれてしまうのです。達也は、この世に突然変異で現れた単なる怪物なのでしょうか。強烈な感情に心を支配された時、彼以外の誰もが、あんな風にはならないという保障はどこにあるというのでしょうか。 まるで何重もの箱に秘密を詰めておいて、ゆっくり一つずつの蓋を開けていくようにたどりついた結末。そこには読む人ごとに違った答えがあるのかも。語り合いたくなるほど心に残る一冊です。

 

お前には首輪がよく似合う。裏切られた男の復讐と偏愛!

ポイント

才能溢れる部下の青池を、大河内は嫉妬から疎んじていました。彼の作る優れた企画を握りつぶし時には盗み、青池の性癖までもを人前であげつらった結果、ついに逆上した青池に襲撃されます。クビとなり失うものを無くした青池は大河内を監禁。裸にして拘束し、かつての上司にまるで動物のような扱いを強いるのでした。 見たこともない超絶ハード展開で始まるこの物語の、吸引力と絶妙なバランス感覚に驚きます。大河内は肉体的にも精神的にも酷い仕打ちを受けますが、彼のハラスメント行為のえげつなさもきっちり丹念に描かれているので、こんな扱いも言わば因果応報なのだと読者は飲み込まざるを得ません。 大河内に密かに恋していた青池は、仕事に全力で打ち込み彼の役に立とうと努力していたのです。そんなひたむきな働きに対して徹底的な嫌がらせ行為で返された無念さには、誰しもどこかで共感してしまうはず。ノンケ男にいきなり全裸首輪プレイは結構エグいと思うけど、それでも心底卑劣な大河内よりも、むしろ青池に気持ちが寄ってしまうところが否定できないのですよ……!ある意味では青池の痛快な復讐譚としても読めるほど、ぐいぐいと物語へ惹き込まれてしまうのが空恐ろしい。殺意すら感じる限界プレイ自体の怖さよりもむしろ、ここまでやってしまう青池の哀しみをていねいに組み立てるストーリーの妙に唸らされます。 やがて物語が進んで青池の側から語られることによって、視点が逆転。物語はこれまでにない緊張感に支配されます。ここから先は、是非ともご自身の目で確かめて頂きたい……! 胸が絞られるような結末、そしてエンディングへと雪崩れ込んでいった後は一晩語りつくそう! 先生と約束だ!

 
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