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2015.3.31発行

勝手に読書

vol,22

勝手に読書伝説

失恋ショコラティエ

Special Interview

水城せとな

松本潤主演でTVドラマ化もされ、一躍話題をさらった『失恋ショコラティエ』。第36回講談社漫画賞少女部門、第2回ananマンガ大賞も受賞した大人気連載がついに完結を迎えました。連載を終えての心境を含め、水城せとな先生にお話を伺いました。

Profile

みずしろ・せとな/10月23日生まれ。てんびん座。A型。1993年に「冬が終わろうとしていた。」(小学館『プチコミック』4月号掲載)でデビュー。少女マンガ誌にとどまらずBL誌でも活躍。美しい描線で紡がれる骨太な物語が男女問わず熱い支持を得ている。

この世界についてひとつでもたくさんのことを知るよう努めた

失恋ショコラティエ

▲美しく、おいしそうなチョコレートも作品に華を添えている。

失恋ショコラティエ電子版はこちら

――約6年間にわたった連載を終えられた率直なお気持ちを教えてください。
水城 私の中では何年も前に完成しているものだったので、紙に描く作業がやっと追いついた感じです。途中何度も「早く終わりたい!」と思いましたが、なんとか当初の予定通り描ききれてよかったです。長い連載ではいつもそうなのですが、ひたすら根気との戦いでした。
――『失恋ショコラティエ』を構想する以前に、チョコレートやショコラティエを登場させる作品を描いてみたいと思われたことはありましたか?
水城 チョコレートに限定したわけではありませんが、毎回お菓子が登場してそれを巡る物語が展開される、オムニバスの読み切りシリーズものを考えたことがあって、その中にチョコレートのお話もありました。数年前に1話だけ実際に描いたのですが、それはスコーンのお話でした。
――この作品を描くにあたってはどんな事前準備をされましたか?
水城 実際にチョコレート専門店やショコラティエさんに取材させて頂いて、テンパリングから製品の出来上がりまで見せて頂いて、行程の写真も山のように撮りましたし、ショコラティエになるまでの過程や、お店を経営する方としての現実的なお話もいろいろ伺いました。それと、パリの古いショコラトリーに伺って写真を撮らせて頂いて、『choco la vie』の建物のデザインを作り、お店が実際にある場所をいくつか想定して実際に街歩きをして、一番シックリ来たところに場所を決めて、周りの写真もたくさん撮りました。イメージを詳細まで作りましたね。連載が始まってからも国内外問わず、いろんなショコラティエさんや製菓業界の方にお話を伺って、実際に漫画の中で描くかどうかに関わらず、この世界についてひとつでもたくさんのことを知るよう努めました。
――これまでの作品と同様、構想段階でラストが決まってから描き始めたそうですが、着地点までの話の流れを考える際に、特に意識していたことがありましたら教えてください。
水城 このお話は爽太の人生のうちの、サエコに恋をしていた時期を取り出したような構成なので、サエコとのことが終わってからの終盤のパートは演出面でもなるべく静かに、淡々と描こうと決めていました。わたしの頭の中には見えていたけど描かなかったエピソードもいくつかあります。あまり描きすぎると、そこまでの展開と時間感覚が同じになってしまうので。爽太にとってはやはり、サエコがいなくなってからの世界は時間がそれまでに比べてサクサクと早く過ぎ去っていくと思うので、そういう感覚が読者さんにも体感できるように描けたらいいなと思いました。あと、作画面ではサエコの髪に特に気を配ってました。サエコが爽太のお店に転がり込んでから出て行くまであたりのエピソードの際は、サエコの髪型を高校生の頃(爽太が恋に落ちた頃)と同じ状態にしようと決めていたので、その頃にその長さになるよう、時期を計算しながら、作画でも髪の伸ばし具合に注意していました。
失恋ショコラティエ

▲自分が作ったチョコレートを幸せそうに食べるサエコの表情を見ることができた。それが爽太の何よりの幸せ。

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――登場キャラクターのなかで、最も描きやすかったのは誰ですか?
水城 特にキャラクターによる差はないですけど、作画の面ではやっぱり爽太とサエコは一番描き易かったかもしれません。たくさん描いたから描き慣れただけかもしれませんが……。あとサエコはどんどん髪型を変えるので、描いている側としても楽しかったですね。
――登場人物の中で、いちばんご自身と距離が近い(似ている)のは誰だと思われますか?
水城 どのキャラもそれぞれ、わたしっぽい部分を持っていると思います。みんなわたしとは違うけれど、それでも所詮わたしから生まれたものなので。
――『失恋ショコラティ』のエピソード(シーン)のなかで、特に印象深いものとその理由を教えてください。
水城 自分的には実験的なものだったんですけど、サエコが去って爽太が前に進む(えれなに会いにいく決意をする瞬間)までのパートを擬音ナシで描いてみました。ちょうどその回の始まりのモノローグで、”海の中にいる魚のよう”と爽太も言っているので、多分こういう感じ…物音とかも、聞こえてるはずなんだけどどこか遠くて耳に入らないような感覚で過ごしているだろうなと思ったので、爽太視点のシーンには擬音を描きませんでした。擬音って、音の感覚もそうですけど、絵的にもかなり画面を埋めていたんだなと気づきましたね。間をもたせるのが難しかったです。
――読者から反響が大きかったエピソードやシーンを教えてください。
水城 サエコが傘をわざと置いていくシーン。オリヴィエの「ハムスターは同じカゴの中のハムスターとつがいになる」というシーン。爽太とえれなが結ばれるエピソード。爽太が薫子に「女の悪口言う女は嫌い」と言うシーン。えれなが爽太とやっと戦ったシーン。終盤の刃傷沙汰(笑)。起きたことそのものもそうですけど、「ここで伏線回収ですか!?」的な……。あと、まつりの結末については、「自分も若いうちにこうやって男に丸め込まれておけば良かった」っていうリアルな後悔を、想定以上に沢山聞きました。
失恋ショコラティエ

▲爽太の“妖精さん”こと、“小悪魔”サエコの手練手管が勉強になったという男性&女性は多そう(笑)。

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――――読者からのお手紙や反応、周囲の方からのご意見・ご感想等で、特に印象深いものがありましたら教えてください。
水城 男性からは「爽太とは旨い酒が飲めそう」とか「自分はまさにコレ(爽太)だ」とか結構言われましたね。あとは、現実にお会いする女性はみんな「わたし薫子タイプなんです!」と仰るんですけど、それと同時に必ず「サエコみたいな人、周りにいる〜!」とも言われるので、ならば人数的には「わたしはサエコタイプです」と言う人とも同じくらいの確率で出会えて良いはずなんですけど、一度もなかった気がするので……人数的にはいるけど、サエコタイプは「わたしはサエコタイプです!」とはたとえ自覚していたとしても名乗らないんだろうな、と思いました。人気キャラなので名乗るのは図々しいと思うのか、嫌われキャラだから言いたくないと思うのか、わかりませんが……。
――――爽太は、サエコへの想いやそこから生まれる胸の痛みなども、創作の刺激へと変えていきますが、ご自身が創作意欲を刺激されるのはどんなときですか?
水城 やっぱり良い創作物を見たときだと思います。特に映画。良いサスペンス映画を見れば自分もサスペンス描きたい気持ちになるし、良い恋愛映画を見れば自分も上質な恋愛ものに挑戦したい気持ちがわきます。あとは、音楽の歌詞などが何かのスイッチ入るキッカケになることもあります。

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小説を書くのは楽しかった

失恋ショコラティエ コミックス情報

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