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勝手に読書伝説Vol.22.5 特集 ゲストインタビュー

勝手に読書伝説Vol.22.5 特集 ゲストインタビュー

プロフィール
代永翼(よなが・つばさ)
声優/賢プロダクション所属。神奈川県出身。透き通るような高音ボイスを武器に、繊細な少年や謎めいた青年など、様々なキャラクターを演じる。出演作に、『おおきく振りかぶって』『ちはやふる』『Free!』『弱虫ペダル』など。

私のイチオシ!コミック&ブック・レビュー

子どもの頃から少女マンガに囲まれていました
――代永さんはマンガ好きだそうですが、小さい頃はどんな本を読んでいましたか?
代永 幼稚園の頃は『はらぺこあおむし』(エリック・カール)や『注文の多い料理店』(宮沢賢治)、『ぐりとぐら』(中川李枝子、大村百合子)といった絵本を読んだり、紙芝居を見たりするのが好きでした。マンガを読むようになったのは、小学校にあがるくらいからだと思います。僕は姉と妹がいるので、子どもの頃から少女マンガに囲まれていました。
――たとえばどのような作品でしょう。
代永 『美少女戦士セーラームーン』(武内直子)に『赤ずきんチャチャ』(彩花みん)、『ナースエンジェルりりかSOS』(秋元康、池野恋)、『魔法騎士レイアース』(CLAMP)…。姉が『なかよし』も『りぼん』も読んでいたので、少女マンガがすごく身近だったんです。だから今回のアニメ化で『美少女戦士セーラームーンCrystal』に出演させていただけることになったときは、とてもうれしかったです。
――小学生時代、少年マンガに触れることはありませんでしたか?
代永 もちろん、少年マンガも読んでいました。これも姉の影響なんですが、『週刊少年サンデー』を読んでいて、特に『うしおととら』(藤田和日郎)が大好きでした。
――『うしとら』も先頃アニメ化が発表されましたね。
代永 そうなんですよ。出たいなーと思ってるんですけど(笑)。僕は『うしとら』に出てくるイズナという小さい妖怪のキャラクターが大好きで。小学生の頃から声優になりたかったので、『うしとら』がアニメになったらイズナ役がやりたいな、と思いながらマンガを読んでいました。
――イズナのセリフを声に出して読んだり、声優さんの真似事をしてみたことも?
代永 やってましたね(笑)。子どものひとり遊びですけど、『うしとら』だけじゃなく、主人公から脇キャラまで、いろいろなマンガでやっていました。
――学校の図書室は利用するほうでしたか?
代永 はい。うちの学校は図書室に手塚治虫先生のマンガが置いてあったんですよ。『どろろ』も『七色いんこ』も『ブラック・ジャック』も、全部図書室で借りて読みました。特に『どろろ』は繰り返し読んだ覚えがあります。あの作品は完結していないので、次はどういう妖怪と戦うんだろうとか、続きを想像する楽しみがあったんです。僕はあまり外で遊ぶタイプではなかったので、図書室はよく利用していましたね。
――では、初めてご自身のお小遣いで買った本を教えてください。
代永 CLAMP先生の『東京BABYLON』か『聖伝』だったと思います。
――CLAMP作品との出会いは、先ほど挙げてくださった『魔法騎士レイアース』でしょうか。
代永 ちゃんと読んだのは恐らく『X』です。それもやっぱり姉の影響で(笑)。
――お姉様はだいぶマンガ好きでいらっしゃったんですね。
代永 僕と違って姉はアウトドア派なんですけど、マンガは読んでいたほうかもしれません。『X』には他のCLAMP作品のキャラクターたちも登場するので、そういうところもおもしろくて、CLAMP先生のコミックスを集めるようになりました。
――小説など、活字作品でお気に入りの本はありましたか?
代永 中学から高校にかけて『スレイヤーズ』(神坂一)がすごい人気で、僕も例に漏れずアニメも見ていましたし、小説も読みました。『ブギーポップ』(上遠野浩平)もそうですね。『ブギーポップ』は今も本屋さんへ行くと新刊が出ていないか確かめます。
――中高生時代で特に印象に残っているマンガを教えてください。
代永 中学くらいから『週刊少年ジャンプ』を読み始めて、みんなが『ONE PIECE』(尾田栄一郎)や『NARUTO -ナルト-』に夢中になっているなか、僕は『封神演義』(藤崎竜)にハマっていました。物語の世界観も好きだったんですが、藤崎先生の絵柄がすごく好みで、自分でコミックスを集めました。あとは『からくりサーカス』(藤田和日郎)かな。
――藤田和日郎先生の作品がお好きなんですね。
代永 はい。『月光条例』も読んでいました。
――藤田先生にも昨年こちらのインタビューコーナーでたくさんの本をご紹介いただきました。
代永 そうなんですね! 『からくりサーカス』は主人公の勝が好きで、アニメになったら自分が声をあててみたいな、と思いながら読んでいました。好きな作品には必ずひとりはそういうキャラクターがいるんです(笑)。
「マンガそのままのキャラクターだ」といってもらえたらいいな
――声優をされている方の中には、お仕事でマンガに触れる機会が多いぶん、プライベートではあまりマンガを読まなくなったという方もいらっしゃいますが、代永さんはいかがですか。
代永 コミック雑誌を買わなくなってマンガを読む量は減りましたが、それは単純に時間がないからで、マンガとのつきあい方というか、距離感はまったく変わってないと思います。本屋さんで好みの絵柄を見つけたらあらすじを読んで、おもしろそうだと思ったらコミックスを買います。
――マンガや小説など原作のあるアニメ作品に出演されるときは、事前に原作を読み込むほうですか?
代永 読みますね。主人公役をやらせていただくときは、原作者の先生が生み出したその作品の世界観を大切にしたいので特にじっくり読みますし、主人公役じゃなくても、自分のキャラクターがその立ち位置で描かれている理由を考えたりします。ただ、自分の中でキャラクター像を作り込みすぎるのもよくないので、適度な距離を保ちながら読むように心がけてもいます。
――もともと愛読していたマンガや小説がアニメ化し、偶然出演することになったという作品がありましたら教えてください。
代永 ひぐちアサ先生の『おおきく振りかぶって』がまさにそうでした。『おお振り』はもともと『アフタヌーン』で連載を読んでいておもしろいなと思っていたんです。それがアニメ化されることになり、さらに出演できることになって、改めてまとめてコミックスを読んだら、もうどっぷりハマってしまいました。ひぐち先生ならではの繊細な心理描写も素晴らしいですが、それだけじゃなく、実際に取材されたことをマンガの中に盛り込んでいらっしゃるから、等身大の高校生に近い視点で物語を読むことができるんですよね。
――『おお振り』はアニメ化以前からマンガの人気が高く、アニメ化が決まったときは大きな話題を呼びました。注目作品への出演、それも初の主人公役ということで、当時は相当なプレッシャーもあったのではないかと…。
代永 それはもう、すっごくありました。でもそこを気にしていてもしょうがないな、という気持ちもあって。ひぐち先生が僕の声とお芝居を聞いて「三橋は代永さんで」とおっしゃってくださったので、その恩返しをするという意味でも、自分にできる限りの三橋をしっかり演じようと思って収録に臨みました。当時は僕自身にすごく三橋とリンクする部分があったんです。やたらビクビクしていたり、周りの人たちにいじられたり(笑)。そういう自分に似ている部分もあったから、初主人公役でビッグタイトルでまだまだ無名だけれど、でもヘタクソだなとは思われたくないという気持ちでやっていました。だから緊張はしていましたけど、三橋と一緒に成長させてもらった気がします。同年代から大ベテランの先輩までたくさんの出演者がいる現場で、すごく勉強をさせてもらいました。
――『おお振り』に限らず、原作付きの作品だからこそ演じる際に意識していることはありますか?
代永 そのキャラクターを殺しちゃいけない、ということは常に意識しています。原作が持つ魅力や力を生かすのも殺すのも僕らの芝居にかかっているというか。それによって変わってしまうので、『おお振り』ならひぐち先生が持っている三橋像を、『弱虫ペダル』なら渡辺航先生が持っている真波山岳像を、どうしたら壊すことなく引き出すことができるかというのは考えます。アニメを見た人に、「三橋が生きている」「山岳が生きている」と思ってもらえたらいいな、「マンガそのままのキャラクターだ」といってもらえたらいいな、という気持ちで演じています。
『弱虫ペダル』は熱いのに泣けるんです
――先ほどは学生時代の思い出の作品を伺いましたが、大人になってから出会った作品で特にお気に入りの一作を教えていただけますか?
代永 好きなマンガはたくさんありますけど、今アニメに出演させていただいている『弱虫ペダル』は、最近も雑誌の連載をチェックすることがあるくらい、続きが気になるマンガです。
――実は『弱虫ペダル』に出演されている方にお話を伺うと、みなさん揃って最近の熱いマンガとして『弱虫ペダル』を挙げられるんです。
代永 そうなんですか(笑)。『弱虫ペダル』は友情だったり絆だったり、それぞれががんばっている姿が本当に素敵なんですよね。渡辺先生がつくり出す世界観がとにかく熱いので、それを壊しちゃいけないという思いもあって、演じる側の僕らもテストのときからみんな全力なんです。これは『おお振り』にもいえることですが、先生方がひとりひとりをとても大事に描いてくださっているのがすごく伝わってきて、それがそのまま作品の魅力になっているんじゃないかと思います。普通は登場人物が増えてくるとどうしても個々のセリフは減ってくるじゃないですか。でも『弱虫ペダル』はそのあたりについてすごく配慮されているように感じます。だからこそ読んでいてすごく泣けるんですよね。熱いのに泣けるんです。
――今のお話で作品の魅力も代永さんの思い入れの深さも伝わってきました。先ほど学生時代に比べて読書量は減ったとおっしゃいましたが、普段はどういうときに本を手に取ることが多いですか?
代永 一番多いのは現場から現場への移動時間ですね。時間があったら本屋さんへ行き、新人のマンガ家さんを探したりもします。習慣的にコミック雑誌を読んでいればわかることなんですが、最近は雑誌を購読していないので本屋さんでチェックするんです。僕はインターネットのレビューや口コミはまったく読まないんですね。それを書いた人の感性が自分と合うとは限らないから、必ず実際に本を手に取って、おもしろそうだと思うものを直感で買うんです。当然、買ってよかった!と思うこともあれば、失敗した!と思うこともあるんですが(笑)。ただ、本屋さんで「これおもしろいよね」なんて話している人の会話を聞くのは好きです。自分が出演しているかどうかにかかわらず、『ハイキュー!!』(古舘春一)とか『ダイヤのA』(寺嶋裕二)とか、アニメ化した作品が話題になっているとうれしくなるんですよね。
――ご自身が携わっていない作品の話でも、嫉妬したりせずにうれしくなるのですか。
代永 自分がオーディションを受けてダメだった作品の場合は悔しくもなりますけど、普段一緒にがんばっている役者仲間が出ている作品が評判になっていたら、いい刺激になりますし、うれしい気持ちにもなります。だから本屋さんへ行くと周りの人の会話に聞き耳を立てていたりします(笑)。
――レビューなどは読まないとのことですが、ご友人など周囲の方の薦めをきっかけに手に取った中で印象的な作品はありますか?
代永 パッとは思い浮かばないですね。「おもしろい」の基準は本当に人それぞれだと思うので、基本的に人に薦められた本を読むほうではないんですよ。僕が好きな作品をほかの人も「おもしろい」といっていたら会話に参加することはありますけど、自分が「すごくいい」と思ったものでも、僕から積極的に人に薦めることはないです。
読書は僕にとって一番の息抜きです
――『おお振り』や『弱虫ペダル』以外で最近コミックスを集めている作品をいくつか教えてください。
代永 最近だと、『八犬伝-東方八犬異聞-』に出演していたという繋がりもあって、『GetBackers -奪還屋-』を描いていらした綾峰欄人先生が原作を担当されている『特区八犬士[code:T-8]』(マンガ:栗元健太郎、咲)や、藤崎竜先生の『かくりよものがたり』を集めています。もともと僕はおふたりのファンなので、新作はいつもチェックしているんです。
――直感で手にした作品ではいかがですか?
代永 『文豪ストレイドッグス』(朝霧カフカ、春河35)と『アホリズム』(宮条カル)はそうですね。『文豪ストレイドッグス』は文豪の名前がついたキャラクターたちが特殊能力で戦う話で、『アホリズム』は歴史上の人物のクローンが出てくるんですが、どちらも本屋さんで見かけておもしろそうだなと思って以来、コミックスを集めているマンガです。
――昔からずっとバトル系のファンタジー作品がお好きなんですね。
代永 そうですね。神話がモチーフだったり、異世界へ行ったり、特殊な能力で戦ったりするような話は昔から好きです。先ほどの『X』もそうですし、『ふしぎ遊戯』(渡瀬悠宇)は『玄武開伝』も読みましたし。
――『ふしぎ遊戯』は2月末発売の『flowers』で新作がスタートするそうですよ。(編注:取材は2月上旬に行いました)
代永 それは楽しみですね。僕は昔から渡瀬先生の絵が好きで、『ふしぎ遊戯』だけじゃなく『妖しのセレス』なんかも読んでいました。
そういえば、昔好きだったマンガで最近新作を読んだ作品に『地獄先生ぬ~べ~NEO』(真倉翔、岡野剛)がありました。郷子たちが大人になっているところもおもしろいんですが、昔の七不思議と今の七不思議が違うのも興味深くて、この前マネージャーとも『ぬ~べ~』の話で盛り上がりました(笑)。
――今改めて新旧の『ぬ~べ~』を読み比べたら楽しそうです。では、ここで本企画恒例の質問をさせてください。この企画ではゲストの方に「○○なときに読みたい本」を教えていただいています。代永さんも「○○」にお好きなテーマを入れて本をご紹介いただけますでしょうか。
代永 ん~…(しばし熟考)。「初心を思い出す本」で、『X』と『うしおととら』と『封神演義』。この3つは僕にとってある種の原点かなという気がします。読むと当時のわくわくした気持ちを思い出すんです。特に『X』は自分で1巻から集めたという点でも思い出深くて。
――中断してしまっているのが惜しいですね。
代永 そうなんですよね。完結まですごく見たい作品なので、CLAMP先生がいつか描いてくださるのを待っています。
――最後に、代永さんにとっての読書の楽しみ、マンガの魅力を教えてください。
代永 読書は僕にとって一番の息抜きかなと思います。マンガを読んでいると自分もその世界に入り込めるんですよね。ある意味、誰にも邪魔されない瞬間なんです。特定のキャラクターに感情移入するのも、視点を変えて自分がその世界にいることを想像するのも楽しい。そういういろいろな楽しみ方ができるのもマンガの大きな魅力だと思います。それにマンガは何かに悩んだり疲れたりしているときに、背中を押してくれることもありますよね。極端にいえば、マンガは生きる希望すら与えてくれる力の源なのかなと思います。
――これからも素敵な読書ライフをお過ごしください。本日はありがとうございました。
うしおととら 1巻
作者:藤田和日郎 出版社:小学館
うしおととら 1巻

蔵の中に、500年も閉じこめられていた妖怪。ヤツはその昔、人を食い、悪業の限りを尽くしていた。ひょんなことからヤツを解き放ったのが、蒼月潮(あおつきうしお)。うしおはヤツにとらと名づけた……。うしおととらの伝説が、いま、幕を開ける!

うしおととら 1巻
おおきく振りかぶって 1巻
作者:ひぐちアサ 出版社:講談社
おおきく振りかぶって 1巻

県外の高校に進学した卑屈で弱気なピッチャー・三橋廉(みはし・れん)。見学するだけと訪れたものの強引に入部させられたのは、全員1年生(くせ者揃い)に女監督(コワイ)という創設まもない野球部だった! オレらのエースは暗くて卑屈。勝つために、弱気なエースのために。行け、オレら! 読むとためになり、しかも血沸き肉躍り涙する。絶対に面白い本格高校野球漫画!

おおきく振りかぶって 1巻
弱虫ペダル 1巻
作者:渡辺航 出版社:秋田書店
弱虫ペダル 1巻

ママチャリで激坂を登り、秋葉原通い、往復90km!! アニメにゲーム、ガシャポンフィギュアを愛する高校生・小野田坂道、驚異の激コギ!! ワクワクの本格高校自転車ロードレース巨編!!

弱虫ペダル 1巻
封神演義 1巻
作者:藤崎竜 出版社:集英社
封神演義

紀元前11世紀の中国、殷(いん)の時代末期。崑崙山脈(こんろんさんみゃく)の仙人・太公望(たいこうぼう)は悪しき仙人・道士を封印する「封神計画」という任務を受ける! 殷の皇帝・紂王(ちゅうおう)を誘惑して暴虐の限りを尽くす仙女・妲己(だっき)を、太公望は真っ先に封神しようとするが…!?

宮封神演義

代永翼さんからのメッセージ

マンガも小説も、物語の世界やストーリーを想像するおもしろさが味わえますし、ときには番外編という形で主人公以外のキャラクターの生活を垣間見ることもできます。僕たちが皆さんからいただくお便りに力をもらうように、マンガや小説は、読めば「明日もがんばろう」という気持ちになれるアイテムだと思うので、いろいろなものに興味を持って、たくさんの本を読んで、自分の感性をより豊かにしてほしいなと思います。これからも一緒に読書を楽しんでいきましょう。

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