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2014.2.2発行

勝手に読書

vol,21

勝手に読書伝説

累―かさね―

Special Interview

松浦だるま

新人作家の初連載作品にして、瞬く間に多くの読者を魅了した『累―かさね―』。2014年12月にはスピンオフストーリー『誘―いざな―』を小説として刊行するなど、ますます目が離せない活躍を見せる松浦だるま先生に創作秘話を含めお話をお聞きしました。

Profile

まつうら・だるま/2009年に「チョコレートミントの初恋」で第12回イブニング新人賞ゆうきまさみ大賞優秀賞を、2012年に「雪女と幽霊」で第19回イブニング新人賞宇仁田ゆみ大賞優秀賞を受賞。2013年より『イブニング』(講談社)で『累―かさね―』の連載を開始し、現在も連載中。

小説を書くのは楽しかった

累―かさね―

▲累の前に現れた演出家・羽生田釿互。彼は“口紅”の秘密を知っていた。

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――これまでに描かれたエピソードやシーンの中で、特に印象深いものとその理由を教えてください。
松浦 第1~2話の始まりのエピソードは、私の漫画家としての始まりでもあったので、思い入れが強いです。あとは28~30話も、以前からずっと温めていたもう一人の主人公「野菊」を登場させられたことが嬉しくて、描いていてとても楽しかったです。
――かさねは美醜という概念や事実に苦しめられます。ご自身は、「美しい」「醜い」とはどういうことだと思われますか。言葉から受けるイメージでも結構ですので、それぞれ教えてください。
松浦 この質問に関しては、私の言葉だととても陳腐な表現になってしまいそうなので、作品の中で表現していけたらいいなと思います。ちなみに私自身は美醜に無頓着なほうだと思います。
――作中では、「演じる」「他者になる」ということがかさねに定められた命題のように登場します。『かもめ』『サロメ』など有名な演目も題材になっていますが、演劇や演じるということにもともと興味をお持ちだったのですか? お好きな演目や劇団、俳優がいましたらあわせて教えてください。
松浦 中学校で演劇部に入って、自分とは異なる人物を演じることの楽しさを知りました。それ以降はまったく演じる経験というのは無いですが、『累―かさね―』を描くことになってから時間を見つけて演劇を観に行くようになりました。蜷川幸雄さんはやっぱり物凄いなと思いました……。
――読者からの感想で特に印象深かったものがありましたら教えてください。
松浦 「かさねに感情移入してしまう」「かさねにまったく感情移入できない」という対照的なご感想をいただくことがあり、どちらもまともなご意見だと思いますし、とても興味深いです。
累―かさね―

▲類稀な演技の才能を持っていた累は、持病があり、舞台に立つのが困難な若手美人女優・丹沢ニナと“互助関係”を結ぶ。しかし次第にふたりの間には亀裂が…。

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――この作品だからこそ、描いていて難しさを感じるのはどんな点ですか?
松浦 美人を美人とわかるように描かなくてはいけないのですが、いまだに難しいです。
――また、この作品だからこそ描くときに気をつけている点、大切にしている点がありましたら教えてください。
松浦 各人物の感情の動きや、価値観のぶれです。
――本作の前日譚である小説『誘―いざな―』が発売中です。この作品を執筆するに至った経緯を教えてください。
松浦 かさねの母親の設定もちゃんと考えておいたほうがいいと担当さんに言われたので、それをプロットにまとめて持っていった日に偶然、「スピンオフを小説でやってみてはどうか」というお話をいただきました。それから二転三転あって、星海社さんから声をかけていただき、本格的に小説として書き始めました。
――『誘―いざな―』の着想はいつ頃からあったのでしょうか。
松浦 『累―かさね―』の1・2話の原稿を描き始めたあたりで、ぼんやりとイメージし始めた感じだったと思います。
――『誘―いざな―』を漫画で描こうとは思われませんでしたか?
松浦 『累―かさね―』の本編中に、回想で少しだけでも出せればいいなとは思っていました。
累―かさね―

▲植物人間状態となったニナを前に、累は彼女の“顔”を借りつづけ、虚構の世界を歩き始めることを決意する。そう、かつて彼女の母親がそうしたように――。

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――小説執筆中、もっとも苦労したこと、楽しかったことをそれぞれ教えてください。
松浦 漫画を描く合間で書かなければならなかったので、スケジュールの面では混乱しましたし、漫画と小説両方の担当さんにご迷惑をおかけしました。あと、ただでさえ初めての試みで、一日に1万字以上書いた経験などももちろん無かったので、すごく勉強になりました……。でも楽しかったです。私の場合、漫画の物語を作るときは、展開や台詞をまず文字で書きだして、そこから削っていく作業になるのですが、小説はむしろ文章を足していく作業なので、もともと頭の中にあるものをとても贅沢に表現できたと思います。ただ、本業ではない上に文章で物語を書き上げる経験は初めてだったので拙さは否めなく、これが本当に世に出てしまうのか?と不安になったりしました。不安をやわらげるためにも全力で取り組むしかなかったです。また、漫画のほうでは、このエピソードがいざなの一人称で語られることはきっと無いので、いざなのために丁寧に書いてあげないといけないとも思いました。
――『累―かさね―』に連なるまた別の話を小説で書かれるご予定や構想はありますか?
松浦 今のところ予定はないです。ただ、構想もまだ不十分ですが、書きたいという気持ちだけはあります。
――『累―かさね―』の今後の見どころをぜひPRしてください。
松浦 美醜によって持たざる者として生きざるを得なかったかさねと野菊が今後どう関係していくのかを見ていただきたいです。また、小説を読まれた方には、もう故人であるいざなの影が、各人物の思考や情景の中にちらついて見えるかもしれません。

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最初は地味めな女の子を主人公として考えていた

まだ人並みに頑張れていないような気がする

累―かさね― コミックス情報

  • 累―かさね―(1)を読む
  • 累―かさね―(2)を読む
  • 累―かさね―(3)を読む
  • 累―かさね―(4)を読む

 

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©松浦だるま/講談社

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