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2015.2.2発行

勝手に読書

vol,21

勝手に読書伝説

累―かさね―

Special Interview

松浦だるま

新人作家の初連載作品にして、瞬く間に多くの読者を魅了した『累―かさね―』。2014年12月にはスピンオフストーリー『誘―いざな―』を小説として刊行するなど、ますます目が離せない活躍を見せる松浦だるま先生に創作秘話を含めお話をお聞きしました。

Profile

まつうら・だるま/2009年に「チョコレートミントの初恋」で第12回イブニング新人賞ゆうきまさみ大賞優秀賞を、2012年に「雪女と幽霊」で第19回イブニング新人賞宇仁田ゆみ大賞優秀賞を受賞。2013年より『イブニング』(講談社)で『累―かさね―』の連載を開始し、現在も連載中。

最初は地味めな女の子を主人公として考えていた

累―かさね―

▲美貌と才能を併せ持った“伝説の女優”・淵透世の娘である累(かさね)。しかし醜悪な容貌を持った累は、幼い頃より周囲から苛烈ないじめを受けていた。

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――『累―かさね―』は、怪談『累ヶ淵』をモチーフとしているそうですが、『累ヶ淵』は何をきっかけに知られたのでしょうか。
松浦 辻惟雄先生の『奇想の江戸挿絵』(集英社新書)という本がきっかけです。『累ヶ淵』を元にした物語は江戸時代からいろんな人の手で書かれていて、そのひとつである『新累解脱物語』の挿絵を見て興味を持ちました。
――『累ヶ淵』に感じた魅力を教えてください。
松浦 『累ヶ淵』は、醜くして殺された累という女性が怨霊となって他の娘に取り憑くという怪談、つまり怖い話のはずなのですが、累が自分を殺した罪を人々の前で暴く展開は痛快で、また怨霊であるはずの累が妙に人間らしいんです。そもそも祐天上人を称える説話であり、怪談であり、ある意味で悲劇でもあり、しかもムラ社会の負の面に斬り込んでいる凄い物語だと思うのですが、どこか笑ってしまいそうなおかしさもあって、怨霊の累自体がやっぱり憎めない。いろんな色を帯びた物語なので強く惹かれました。
――そもそも『累―かさね―』はどんなことから着想し、膨らませていったものだったのですか?
松浦 「くちづけで顔が入れ替わる」というアイデアが先に浮かんで、そこに口紅や、美醜というテーマ、そして怪談『累ヶ淵』の要素を足していったという感じです。
――『累―かさね―』を着想した際、はじめに頭の中にあったイメージはどんなものでしたか?
松浦 最初は現在のかさねほど醜くない、地味めな女の子を主人公として考えていました。
累―かさね―

▲あまりにも過酷な状況に耐え切れなくなったとき、累は亡き母の言葉を思い出し、形見である口紅をひき、自分をいじめる美少女にくちづけをする。

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――また、そのイメージは作品を描いていくにしたがって、何か変化しましたか?
松浦 「美」「醜」をわかりやすく記号化するために主人公をより醜くしていきました。デザインを振り返ると、「醜くないけど地味め」→「リアルな醜さ」→「妖怪的な醜さ」→「愛嬌のある妖怪的な醜さ」へと変化して今に至ります。
――『累―かさね―』を描くにあたって、構想段階など、事前にもっとも力を入れたのはどんなところですか? 何か資料を集められたりしましたか?
松浦 とにかく知識が足りないので、美醜関連、演劇関連の本をいろいろ読みました。それから、伝統芸能や古代の巫女について重点的に資料を集めました。
――『累―かさね―』の構想や執筆にあたって、影響を受けたり、イメージを湧かせる原動力となった映画や小説、漫画など作品がありましたら教えてください。
松浦 いろいろあるはずなのですが、なぜか今、作品名が浮かばず……すみません。
――連載開始前、どのあたりまでお話の流れを考えていましたか?
松浦 確か羽生田釿互が登場するくらいまでだったと思います。あとは野菊や、かさねの母であるいざなについてはぼんやり構想がありました。
累―かさね―

▲母の遺した口紅を使い、くちづけを交わすと、相手と“顔”が入れ替わることを知った累。彼女の運命が大きく動き出した瞬間だった――。

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――連載開始前後と現在とで、設定・展開などで大きく変わった部分がありましたら、差し支えのない範囲で教えてください。
松浦 たぶん、あんまり変わってないかもしれないです。
――かさねというキャラクターを生み出す際、気をつけた点や苦労した点を教えてください。
松浦 読まれる方が、醜い主人公に感情移入できるよう描くにはどうしたらいいか、というのが考えどころでした。狡猾で卑屈だけど、良心が無いわけではないし普通の考え方も持っている、それなのに堕ちていってしまう姿を描かなければいけないのですが、これは今後も気を付けなければならないところです。
――かさねを描いていて、楽しさや難しさを感じるのはそれぞれどんなところでしょうか。
松浦 キャラクターの感情が激しく揺さぶられる場面は描いていて楽しいです。
――かさねに限らず、キャラクターの心情を描くにあたって、特に気をつけているのはどんなところですか?
松浦 キャラクター自身が背負った業にどう決着をつけさせるべきなのか、またどう救われるべきなのか、ということを考えながら、その人物の心の動きを描くようにしています。
――これまでに登場したキャラクターの中で(メイン、サブ問わず)、もっとも描きやすいのは誰ですか?
松浦 かさねと、少女時代のいざなです。衝動がくっきりしているので描きやすいです。
――同様に、描くのが難しいのは誰ですか?
松浦 男性キャラクター全般です。
――登場人物の中で、いちばんご自身と距離が近いのは誰だと思われますか?
松浦 たぶん、かさねです。
――『累―かさね―』を描くにあたって、絵柄を変えたそうですが、作品に合った絵柄はすぐに見つけられたのでしょうか。それとも時間をかけて模索されたのでしょうか。
松浦 描きながらだんだんと変えていった感じです。今後も変わっていくと思います。
――絵柄を変える際にもっとも意識したのはどんなことでしたか?
松浦 以前はもったりとした癖のある絵柄だったのですが、美醜を記号的に見せられるように癖を矯正していきました。シュッとした鋭い線を描こうとし始めたのも、累を描きだしてからです。
――『累―かさね―』という作品を描いていて、絵的にもっとも楽しいのはどんなところを描いているときですか?(例:黒髪のベタ、身体の描線など)
松浦 人物の表情です。特に醜いかさねの目の表情です。

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小説を書くのは楽しかった

累―かさね― コミックス情報

  • 累―かさね―(1)を読む
  • 累―かさね―(2)を読む
  • 累―かさね―(3)を読む
  • 累―かさね―(4)を読む

 

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©松浦だるま/講談社

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