勝手に読書伝説Vol.16 河原和音インタビュー＆『青空エール』ガイド

2014.09.03発行

勝手に読書

vol,16

勝手に読書伝説

Special Interview

河原和音

何度も挫折を繰り返して、泣きながら、それでも夢をあきらめずにがんばるつばさの姿に多くの共感と応援が寄せられる「青空エール」。きらきら眩しい高校生たちの汗と涙の青春ストーリーは、どんなところから生まれたのか。作者である河原和音先生に書面でお答えいただきました。

Profile

かわはら・かずね／3月11日生まれ。1991年に「彼のいちばん好きな人」（集英社『別冊マーガレット』4月号掲載）でデビュー。現在、集英社『別冊マーガレット』にて「青空エール」を連載中。

自分の失策が原因で試合に負けてしまった大介。不甲斐なさに涙する大介の姿につばさの心も痛む。

――子どもの頃の将来の夢はなんでしたか？: 河原　漫画家と保母さんです。あとお嫁さんとお母さんです。
――いつ頃から漫画家になりたいと思うようになりましたか？: 河原　幼稚園のときには『漫画家入門』を２冊持っていました。「キャンディ・キャンディおえかきデスク　ミスまんが家」というトレース台を持っていました。
――きちんとコマを割ってペン入れをして原稿を描きあげたのはいつ頃、どんな作品でしたか？: 河原　17歳くらいのとき。『別冊マーガレット』に初投稿した16Ｐの漫画です。
――シーンやセリフ、キャラクターなど、何を核にネームを考えることが多いですか？: 河原　シーンのときと、セリフのとき、キャラクターのときとそれぞれあります。同じくらいの割合だと思います。結局全部そろわないとよい漫画にならないと思うので、どこから始めても最後は全部考えます。最終的に核になるのは、キャラクターだと思います。
――どんなときにストーリーを思いつくことが多いですか？（寝転がっているとき・机の前で・散歩中・入浴中…などなど）: 河原　机に向かっているとき以外です。移動中が多いです。バス、電車の中、散歩中が多いです。
――漫画を描くときに欠かせないものはありますか？: 河原　飲み物が欠かせないです。絵を入れるときは、音楽があるといいです。あとはおひさまの光があるほうが好きです。
――漫画を描く作業（ネーム、下描き、ペン入れ…など）の中で、もっとも好きなのはどの部分ですか？　また、苦手なのはどの部分ですか？: 河原　ネームがいちばん好きです。苦手なのは、下描きの7Ｐ目くらいから20Ｐ目くらいです。できたネームを手直しして、完成度を上げてるときがいちばん楽しいです。あとは全部できたときです。

ひとりが上手いだけの演奏では、力が発揮できない吹奏楽。部活を通して、つばさは周囲と力を合わせていくことの大切さ、難しさを知っていく。

――これがなくては絶対に描けない！という愛用の画材を１つ教えてください。: 河原　絶対に描けない!!とは言わないですが、青い方眼の入った薄い定規（Letter社かな？）と、芯が残り１mmくらいまで使える０芯タイプのシャープペンシルがとても気に入ってます。
――読者からの手紙や言葉で特に印象に残っているものがありましたら教えてください。: 河原　どのお手紙もうれしくて「がんばろう！」と思うのですが、読者の方の経験談などが書かれていると、印象に残ります。読んで前向きになれたとか書かれていると、うれしくて泣けます。でもやっぱり、全部うれしいです。漫画家になりたいですという方のお手紙読むと、がんばってー！と思ったりします。
――同業者であるまんが家の方や編集者から言われた言葉で特に印象に残っているものがありましたら教えてください。: 河原　担当さんに「モノローグが上手」って言われたことと、「モノローグ多すぎる」って言われたことです。
――プロの漫画家になったのだと実感したのはどんなときでしたか？: 河原　読んでくれる人がいて、出版社に必要と思ってもらえて、それに責任をもって応えられる間はプロなのかなぁと思うけど、読者さんがいなくなってしまったら、すぐプロでなくなってしまうと思うので、今はプロ…なのかもしれないと思っています。が、あんまり自信はないです。なるべく長くプロでいたいなぁと思っています。漫画を描くのが好きなので。でも、プロ根性は自信ないときでもなくさないでいたいと思います。
――これまでに描かれた作品の中で、特に印象深い作品は何ですか？: 河原　連載以外だともう手に入らないと思うし、古すぎて本当に読まないでください、なのですが、デビューして、「可愛さあまって」→「男の子にはわかるまい」→「幸せのかんづめ」→「愛してくれない」→「天晴」の流れは、１作ずつ何かをつかんでる感じがあって、思い出深いです。そのあとだと、「愛のために」がわりと気に入ってます。最近描かせてもらった「好きになったよ」も、描いてて楽しかったので気に入ってます。仕事中に「なんだろう、楽しい。仕事じゃないみたい。遊んでるみたい」とアシスタントさんにつぶやいてました。たぶん短かったからだと思います。
――漫画家になってよかったなあと思うのはどんなときですか？: 河原　漫画のお友だちができたこと。好きな漫画家さんに会えたこと。尊敬している漫画家の先生や、信頼している漫画家の友だちに漫画の悩み相談ができることです。でもいちばんうれしいのは、やっぱり漫画を描いて「面白かったです」「好きです」と言ってもらえたときです。
――デビュー24年目を迎えられた現在の率直なお気持ちを教えてください。: 河原　なるべく長く漫画描きたいなぁ――と思います。あと、面白い漫画描きたいなぁ――です。面白いのがいちばんです。あと、絵が上手くなりたいなぁ――です。

練習がキツくないわけがないけど、挫けることも、落ち込むこともしょっちゅうあるけど、叶えたい夢に近づくためには、前に進むしかない。つばさと大介の夢は叶うのか。

――デビュー当時と現在とで、漫画家としての心境の変化はありますか？: 河原　新しい漫画を描きたいし、前描いたものより面白いものを描きたいなと思っています。デビューしたときは、前描いたものがないので、そういうのはなかったです。いろいろと初心を忘れているので、思い出したいです。今すごーく。
――デビュー当時の自分に現在の自分からなにかアドバイスを贈るとしたら、それはどんなものでしょうか。: 河原　どんまい。
――近年、漫画原作のお仕事も手掛けられていますが、漫画原作という仕事の面白い点、難しい点をそれぞれ教えてください。: 河原　面白いです、とっても。難しいのは、作画してくださる漫画家さんにノって描いてほしいので、のびのび描いてもらうにはどうネームを描いたらいいのか、形がわからないことです。でも、そういうところを探りながら描いたりするのも楽しいです。
――今後新しく挑戦してみたいお仕事がありましたら教えてください。: 河原　ヒマになったら、デジタル絵を趣味で描きたいです。
――プライベートで新たに挑戦してみたいことがありましたら教えてください。: 河原　ジョギング。体力強化です。
――最後にひかりTVBOOKを利用している読者へメッセージをお願いいたします。: 河原　読んでいただいてありがとうございます。面白いこと言えなくてすみません。物語って面白いですよね。漫画って面白いですよね。大好きです。『青空エール』読んでみてもらえたらうれしいです。がんばりますので、よろしくお願いします。
――ありがとうございました。

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