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勝手に読書伝説Vol.14.5 特集 ゲストインタビュー

勝手に読書伝説Vol.14.5 特集 ゲストインタビュー

プロフィール
小中千昭(こなか・ちあき)
1961年東京都生まれ。特殊脚本家、作家。成城大学文芸学部(映画記号学)卒業。映像ディレクターとしての活動を経て、1989年ビデオシネマ『邪願霊』で脚本家デビュー。ホラー作品を数多く手がけ、後のJホラーと呼ばれる作品群のイディオローグ的な存在となった。その後アニメ、映画、テレビドラマ等に脚本を提供。
 
――「恐怖の作法」読ませていただいたんですけど、すごいよかったです。
小中 ありがとうございます。
――最初に岩波版で数年前に読んだ時があって
小中 はい、はい。
――あのときにすごい他のホラーの技法とちょっと違って、より具体的で、こんなにネタばらししていいのかなと思うくらいに赤裸々だったんですけど、今回思ったより小中理論の2.0自体があまり具体的な部分が少なかったなと感じたんですけど?
小中 2.0の方が近年の作品を挙げて、より具体的な「べからず集」にはなっている筈です。「こうやりゃいいんだ」ではなく、「これはやってはいけない」という事に関してはね。
――あんまり予定がなかった?
小中 要するに1の具体性っていうのは、第一部で、ベーシックなことはもう変わってないと。ただそれを、じゃあそういうマクロ的なっていうのか、技法だけで絞っていくと、恐怖の本質とちょっと遠ざかるんではないかという懸念っていうのか、まぁ二部を書きたい動機としてはそういうことがあって。
――はい。
小中 まぁ恐怖の正体っていうのを探ろうという意味では、恐怖を実作として創り出したいという人にとっては充分なサジェストになっている。
――小中さんといえば世の中的には、ホラーの脚本家として知られていると思うのですが、現実に怖い経験をした最初の体験ってなんだったのでしょうか?
小中 んー、まぁいわゆる超自然な体験っていうのは基本的にはないんです。
――会社名やlainのあのパジャマのキャラクターとかにクマを使われてるんですけど、クマに対しての思い入れや何かエピソードとかありますか?
小中 小中兄弟っていうことと映画監督を小中和哉(実弟)がやってまして、ふたりで映画ごっこを始めたのが映画作り最初で。その時の主人公が我々が持ってたぬいぐるみのクマ
――だから、そのまま継続してる、という。特に何かそこに対して、あの何かの象徴だとかそういう意味では……
小中 ないですね。
――あ、ないんですね(笑)

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――第二部でネットの怪談のとき、結構後半のほう駆け足な展開だなぁと読んでいて思ったんですけど、ネットで怪談を伝播させる側の快楽、逆に創作者としてその辺って実体験としてあると思うんですけど、怖がらせる側の楽しさの言及とかって何かありますか?
小中 駆け足な展開というのは誤読でしょう。前半のネット怪談については、ルポルタージュなので、なるべく加工せず、実際にあったコミュニケーションを記述している訳だけど、私はジャーナリストではなく、実作の為の論考をしていた訳です。前半の特徴的な怪談と、自分が2007年以降に手掛けた、主にホラー作品群のモチーフに、否応でも共通するバックグラウンドを見出してしまった。それが第二部の主題です。
――現在ホラー映画のメインターゲットって10代の後半から20代くらいかなと思っているんですけど。
小中 ずっとそうですよね。
――ちょっと素朴な疑問として、メインターゲットを意識してやっぱり素材を選んでますよね、もちろん。学園ものだったりとか、主人公が若かったりとか。
小中 んー、それは僕というよりはあの
――全体ですか?
小中 それは販売会社のほうがそう思うんだと思いますけど。わたし自身は、「あなたの知らない世界」みたいないわゆる大人が見るもの。で、大人が出てくるものっていう書いてはいるので、決して子供にっていう振り切ってはいない。
――振り切ってはいない、と。やっぱり上の世代に向けたホラー、逆にすごいコアというか、絞ったターゲットのものってあまり見たことがないなぁと思うんですけど、あるんですかね?
小中 コア?
――コアな。例えば50代60代向けホラー、みたいな。
小中 50代60代向けホラー(笑)
――はい。
小中 まぁなかなかないかもしれないですねぇ。
――成立しうるのかなぁ、と。
小中 んー、いや、あのー、50代60代っていうよりは、文化的な、まぁその鑑賞能力というのか、「稀人」っていう作品なんかは、若い人が見てもまぁ、薄気味悪いです、という感情を抱くでしょうけど、あそこで言及しているさまざまな文学であったり、まぁいろんな都市伝説であったり、知ってる人ってなるとそれはやっぱり40代以降になるでしょうし。そういう風に多層的にというか、最初からその4、50代って絞りきるのはちょっと商業作家としてはまぁあまりとりたくない手段なんだけど。
――はい。
小中 よりそういうジャンルについてだったり、まぁそういう教養があったりすれば、より楽しめるっていうか、あぁこういうことに繋がっちゃってるのねっていう考えの面白さっていうのを感じてもらおうというのがどんな作品でも少しはケアしてるというか、まぁそういう風に作るんです。
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小中さんの今回のインタビューで言及していた新作はこちら!!

恐怖の作法:ホラー映画の技術
恐怖の作法:ホラー映画の技術

ホラー映画やアニメの第一線で活躍してきた著者が、小説や映像など様々な形で人を惹きつけ続ける「ホラー」つまり「怖い物語」がどのように作られるかを論じ、技術を伝授する実践的な一冊。
人はなぜ、ホラー映画で怖がろうとするのか。
ホラー映画を数多く執筆した脚本家によって書かれた、恐怖の探求。
ホラー映画を作りたい人、より怖いホラー映画を見たい人に送る本。
Jホラーのイディオロギーとなった「小中理論」を再度論じ、新たに「小中理論2.0」も書き下ろされている。
ホラー映画に留まらず、恐怖について様々なアスペクトから解析を試み、そこにあるシステムを詳らかにしようとする「恐怖のテキスト」。【全国書店にて好評発売中!!】


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