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2013.11.30発行

勝手に読書

vol,7

勝手に読書伝説

ましろのおと

Special Interview

羅川真里茂

長らく少女マンガ界で活躍してきた羅川真里茂先生が、デビュー20年で初めて少年マンガ誌に進出。伝統芸能・津軽三味線と共に生きる少年の青春物語『ましろのおと』について、創作秘話をお聞きしました!

Profile

らがわ・まりも/青森県出身/1990年に「タイムリミット」(白泉社『花とゆめ』)でデビュー。翌年連載を開始した『赤ちゃんと僕』で一躍人気作家の仲間入りを果たすと、『ニューヨーク・ニューヨーク』『しゃにむにGO』(以上、白泉社)など、少女マンガ誌で次々話題作を発表。2010年より『月刊少年マガジン』(講談社)で連載を始めた『ましろのおと』で、第36回講談社漫画賞・少年部門、第16回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門優秀賞を受賞。現在は同作のほか、『別冊花とゆめ』(白泉社)で『いつでもお天気気分』を不定期連載中。

02.羅川流“音”の描き方

ましろのおと

各大会で優勝を総なめにするプロ奏者・神木清流こと緒方洸輔。あまりに澄んだその音に、雪は衝撃を受ける。

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イメージは『島耕作』シリーズなんです

――津軽三味線の音をマンガで表現するにあたって意識していることを教えてください。
羅川 音楽の音の表現は人によって描き方が違うんですよね。無音で描く方法もあれば勢いで表現する方法もあって。私の場合、読者の多くは津軽三味線の音をあまり知らないと思ったので、無音よりはわざとらしいくらい擬音を入れて描くほうがいいなと思っています。それで、擬音を入れるとしたらみんながイメージする音は“べんべん”だろうなと思ったので、あえて“べんべん”は避けて。新しい擬音はないかなと思って、担当さんに「この音はなんて聴こえる?」と訊きながら考えました(笑)。
――それが“ターン”だったり“ドン”だったり。
羅川 はい。津軽三味線には3本の糸があるんですが、1の糸と呼ばれる一番太い糸はとにかく力強い音がするので、1の糸を弾くときは“ドン”にしました。……私にはそう聴こえるということなんですが。“ターン”となるときは、2や3の細い糸のイメージです。
――そうした擬音だけでなく聴衆の様子などからも、奏者によって奏でる音色が異なることが伝わってきて、本当に演奏を聴いている気持ちになります。
羅川 ありがとうございます。奏者を描くときは、まずその人の音のイメージをワードで決めるんです。清流は“鐘”でキンと響く音、総一は“炎”だからゴォっていうイメージ。雪は気まぐれなので静かな音も奏でるし、激しい音も奏でるし、水音みたいな澄んだ音も奏でます。その場その場で音が変えられるので、松吾郎杯のときは水の音にしようと思って描きました。今後ほかの大会に出たらまた違う音になると思いますが、雪は基本的に“自然”ですね。私が音源を聴いて雨の音に聴こえるなと思ったら、雨をイメージして弾かせるという感じです。
――ご自身が感じたものを雪の演奏に反映されているのですね。その雪は東京でいろいろな人に出会い、日常生活では少しだけ視野が広がり、奏者としても成長し始めました。雪を取り巻くキャラクターたちを作るときは、どういった点に留意されているのでしょう。
羅川 雪を取り巻く環境という意味では、イメージは『島耕作』シリーズなんです。読者の多くは、恐らく8巻から9巻への切り替わりですごく戸惑ったと思うんですが、自分の中では連載を始めたばかりのときから『島耕作』シリーズをイメージしていて。単純に私が島耕作好きなんですが(笑)、あの作品は章ごとに舞台が違って、彼を支えてくれる女の人や部下も変わるじゃないですか。それでときどき過去に出てきた部下がぽっと出てきたりする。『ましろのおと』もそういうイメージで作っているので、松吾郎杯が終わって雪の周りにいる人を変えました。新しい章に入ってそれまで雪の側にいたキャラクターが出なくなったことに戸惑った人は、きっと前のキャラクターに愛着を持ってくれていたんだと思うんですね。そのために、好きだったキャラクターが出なくなったことで切り捨てられたように感じた人もいるかもしれませんが、これからも必要に応じて過去のキャラクターたちを絡めながら描いていこうと思っているので、見ていてもらえるとうれしいです。
ましろのおと

神木流家元の息子・田沼総一は、高校3年生ながら津軽三味線の世界に身を置く者がこぞって注目する俊英。

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――雪が高校生活にあっさり見切りをつけて民謡居酒屋に身を置くようになったときは驚きましたが、あの展開は当初から決めていたのですね。
羅川 そうです。それと、先ほどゴールがわからないといいましたが、やっぱりプロ奏者として生きていくことが音楽家のゴールというか、ひとつの道だと思うので、雪が一奏者として成り立つための道筋をつけたいという思いもありました。学校編はどちらかというと、読者にとってとっつきやすくするための入り口として考えた部分があるんです。なので、自分の中では修行編からが本格的に奏者としての道に入ったという認識です。学園編は、雪が多くの人と接することを覚えるための話でした。
――人づきあい以前に、まず人に慣れましょうと(笑)。
羅川 そう。あとは勝ち負けに対する執着を持ってほしかったというのもあります。
――少しずつながら雪が変化していくと、多少は彼を捉えやすくなったところもありますか?
羅川 雪は相変わらず難しいので…たぶんこの子は最後まで描きにくいんじゃないかと思います。
――過去の長期連載作品の主人公たちは最初から描きやすかったのですか? それとも描いていくうちに馴染んでいったのでしょうか。
羅川 どうでしょう。『ましろのおと』の前に描いていた『しゃにむにGO』はダブル主人公でしたが、延久は最初からすごく描きやすかったです。逆に留宇衣は描きにくくて。延久は体が先に動くぶん、ごちゃごちゃ考えずに描けたんですが、留宇衣は少し雪に近くて、動かずに頭の中でぐるぐる考えるキャラクターだったので…。ただ、読者の人は頭の中で考えていることが誌面に出ていると感情移入しやすいようで、人気は留宇衣のほうがありました。

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01.始まりは「津軽三味線かっこいいな」

03.描いていてピンときたシーン

ましろのおと コミックス情報

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©羅川真里茂/講談社

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