作品内容
領域を超える課題になぜ対応できないのか
地方政府は広がる都市の問題を解決できるのか。住民投票は地方の究極の民主主義なのか。日本の地方政治が抱える構造的問題を抉り出し、解決の糸口まで示唆する。サントリー学芸賞・大佛次郎論壇賞を受賞した注目の地方政治研究者による最新の論考。
【「終章」より】
地方政府を動かす基層的な政治制度の鍵は、政党という組織になると考えられる。政治家個人が有権者の支持をめぐって競争し、分裂した意思決定を生み出すのではなく、地方政府の領域という空間を超えて有権者に支持を訴え、政治家個人が辞めても組織としての決定が残る政党という存在こそが、空間と時間を超えて民意に対して責任を持ちうる。
【主要目次】
第1章 政治制度が生み出す分裂した意思決定
1 領域と結びつく地方政府
2 地方政府と領域を超える課題
3 領域への拘束をもたらす政治制度
4 政治制度の帰結
5 本書の議論と構成
第2章 都市の中心をめぐる垂直的な競争――県庁所在市の庁舎
はじめに
1 戦前の府県庁舎
2 県庁舎の位置づけの変化
3 地方自治再編期の庁舎
得られた知見
第3章 都市を縮小させる分裂した意思決定――2つの港湾都市
はじめに
1 港湾都市の発展と凋落
2 変化への対応
3 人口減少という課題
得られた知見
第4章 大都市の一体性と分節――国際比較と日本
はじめに
1 大都市への注目とその比較
2 地方政府による分節と大都市の成長
3 大都市比較のためのデータ
4 計量分析
5 比較の中の日本の大都市
得られた知見
第5章 民意をどこに求めるか――住民投票と地方議会
はじめに
1 住民投票の類型化
2 住民投票の目的
3 地方議会と住民投票の受容
4 分析
得られた知見
第6章 領域を再編する民意――平成の大合併
はじめに
1 「平成の大合併」における住民投票の位置づけ
2 住民投票の分析
得られた知見
第7章 大都市における分裂した意思決定と民意――2010年代の大阪
はじめに
1 大阪都構想の展開
2 住民投票への過程
3 静かな制度変化
4 住民投票というハードル
得られた知見
終章 分裂した意思決定の克服に向けて
本書は何を明らかにしたか
都市政治の再構築
砂原庸介(すなはら・ようすけ): 1978年大阪に生まれる。2001年東京大学教養学部卒業。2006年東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程単位取得退学。現在神戸大学大学院法学研究科教授。博士(学術)。主要著書に『地方政府の民主主義──財政資源の制約と地方政府の政策選択』(有斐閣、2011年)、『分裂と統合の日本政治──統治機構改革と政党システムの変容』(千倉書房、2017年)、『新築がお好きですか?──日本における住宅と政治』(ミネルヴァ書房、2018年)などがある。
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