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勝手に読書伝説Vol.21.5 特集 ゲストインタビュー

勝手に読書伝説Vol.21.5 特集 ゲストインタビュー

プロフィール
前野智昭(まえの・ともあき)
声優/アーツビジョン所属。茨城県出身。アニメにナレーション、洋画の吹き替えなど、幅広く活躍。出演作に、『図書館戦争』『ログ・ホライズン』『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEレボリューションズ』『弱虫ペダル』など。

私のイチオシ!コミック&ブック・レビュー

僕にとって『DRAGON BALL』は特別な作品なんです
――もっとも古い、本に関する思い出を聞かせてください。
前野 物心ついた頃から乗り物図鑑などはよく見ていましたが、本というものをちゃんと認識して読むようになったのは、小学生になってからだったと思います。学校の教室に『にゃんたんのゲームブック』(作:巻左千夫 絵:岡田日出子)が置かれていて、クラスのみんなで夢中になって読みました。ゲーム感覚で読めるのが楽しかったんですよね。結局、『にゃんたんシリーズ』は親に頼んで買ってもらった記憶があります。
――マンガに興味を持つようになったのはいつ頃でしたか?
前野 マンガも小学生になったくらいじゃないかと思います。5つ上の姉がいるので、姉が買っていた『週刊少年ジャンプ』系のマンガを読んでいました。僕はとにかく『DRAGON BALL』(鳥山明)が大好きで。あの作品に出会わなければ声優にもなっていないだろうっていうくらい、僕にとって『DRAGON BALL』は特別な作品なんです。
――出会いはマンガですか? それともアニメーション?
前野 入り口はアニメーションでした。でもすぐに原作が気になり、マンガを読みはじめたら止まらなくなって、毎日読んでいました。おかげで「あの話」と説明されたらそれがコミックスの何巻に収録されている話か即答できますし、表紙の絵を見ればそのコミックスが何巻かもわかります。
――熱烈ですね。
前野 はい(笑)。周りにもよく驚かれます。僕は昔からあまり絵心がないので、マンガを描くという方向に興味がいくことはありませんでしたが、子どもの頃に夢中になってマンガを読み、アニメーションを見ていたことがいまの仕事に生きているので、無駄ではなかったと思います。もちろん、当時親には「マンガばかり読んでいないで勉強しなさい」といわれていましたけど(笑)。
――学生時代に読んだ小説で印象深い作品を教えてください。
前野 活字の小説を読むようになったのは中学生だったと思いますが、なかでも宗田理先生の『ぼくらの七日間戦争』は印象に残っていますね。そこからハマって、『ぼくらシリーズ』はすべて読破しました。あの作品にはかなり影響を受けていると思います。そういえば、小説を読む楽しみを知って活字の本に触れるようになったら、不思議と国語の成績が上がったんですよ。あのときは、本を読むことで読解力というのは自然に身につくものなんだな、と実感しました。
 それともうひとつ好きだったのが、ゲームを原作とした『小説ドラゴンクエスト』。僕は昔からゲーム好きでもあるんですが、久美沙織先生が書かれていた『小説ドラゴンクエストⅤ』がすごく好きだったんです。ゲームをプレイしたあとに読むとどちらもより楽しめるという小説で、やっぱり何度も読みました。
――お気に入りのタイトルは、その周辺の作品まで網羅したいタイプなんですね。
前野 そうですね。アニメーションの『ガンダムシリーズ』が好きで『ガンダム』関係の小説も読みましたし、『ドラゴンクエスト』は『ジャンプ』で連載していた『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』(原作:三条陸 作画:稲田浩司)も読んでいました。子どもの頃は『ドラクエシリーズ』がすごく流行っていたので、『ダイの大冒険』は周りもみんな読んでいましたけど。
――学校ではクラスメイトたちとマンガの話で盛り上がることも?
前野 ありました。というか、マンガの話をするような人たちしか周りにいませんでした(笑)。中学時代からみんな平気で学校にマンガを持ってきていましたし、高校になったらさらにすごくて、ロッカーにマンガしか入っていないような人もいました(笑)。先生たちにも黙認されていた気がします。
――それは自由な校風ですね(笑)。
前野 そうですよね(笑)。高校では、僕もロッカーの上に積まれていた『GS美神 極楽大作戦!!』(椎名高志)を休み時間に読んでいました。もともと『GS美神』はアニメーションを見ていましたし、原作の存在も知っていたんですけど、コミックスをがっつり読んだことはなかったんです。それで学校にあったコミックスを読んでみたらおもしろかったので、自分でも全巻集めました。
『弱虫ペダル』は先の話まで読まないようにしています
――マンガや小説など原作のあるアニメ作品に出演されるときは、事前に原作を読み込むほうですか?
前野 昔は原作があれば読んでいましたが、最近は作品によって読むときと読まないときがあります。先の展開を知っておいたほうがいいだろうなと思う作品は読むようにしていて、知らないほうがいいだろうなという作品は結末がわかるところまでは読まないようにしています。いま出演させていただいている『弱虫ペダル』は後者です。あの作品は自転車レースの話なので、先の展開を知ってしまうと「どうせ負けちゃうんだろう」みたいな気持ちがどこかに生まれてしまう気がして、いつも台本をいただいた話までしか読まないようにしているんです。台本で初めて次の展開を知るので、『弱虫ペダル』は毎回新鮮な気持ちで演じられていますね。
――反対に読み込んでおいてよかったと思う作品を教えてください。
前野 有川浩先生の『図書館戦争』は、先の展開を知っているからこそ、キャラクターの変化や成長のお芝居ができた作品だと思います。
――『図書館戦争』は前野さんにとって初期の代表作ともいえる作品ですから、思い入れも強いのでは?
前野 はい。『図書館戦争』はアニメ化の話が出て初めて原作を読ませていただいたのですが、小説は何年も前に別冊のⅡで完結しているんですね。でも、僕は『別冊 図書館戦争Ⅱ』の途中までしか読んでいないんですよ。それというのも、すべて読み終わってしまったら自分の中で『図書館戦争』という作品が完全に終わってしまう気がして…。いつか別冊のⅡがドラマCDだとか何かの形で音声になって、自分がもう一度『図書館戦争』に携わることができたら、そのときに最後まで読み切ろうと決めているんです。
――年末には実写映画の続編が公開予定ですし、まだまだ注目のタイトルですから、何か機会があるかもしれません。
前野 その「もしかしたら!」というチャンスにかけて、いまはまだ栞をはさんだまま本を置いてあります。
――『図書館戦争』はアニメ化を機に小説を読まれたとのことですが、もともと愛読していたマンガや小説がアニメ化し、偶然出演することになったという作品はありましたか?
前野 アニメーションでいったら『NARUTO -ナルト- 疾風伝』はそうでした。『NARUTO -ナルト-』は連載がはじまった頃からマンガを読んでいたんですけど、事務所に新人で入ってから何年後かに、音響監督さんから出演のオファーをいただきまして。マンガに登場するセリフを自分がいえる喜びを初めて知り、「このカットのこの忍者のセリフは俺がいったんだぜ」なんて周りにいった覚えもあります(笑)。
――原作をお好きだったぶん、喜びもひとしおだったのでしょうね。
前野 そうですね、すごく感動しました。それと同時に、一読者として読んでいたときと実際に演じたときとで、キャラクターの捉え方に違いを感じたところもありました。僕は忍者役で走りながらセリフをいうシーンがあったのですが、「走りながら」という部分を意識して演じたら、「忍者は走り慣れているので、そんなに呼吸は乱れません」といわれたんです。そのときは「なるほど」と思って、ひとつ新しい感覚を掴めた気がしました。
――ご自身のイメージとは違ったけれど、納得の指摘だったわけですね。では、原作付きのアニメ作品でキャラクターを演じる際、意識することがありましたら教えてください。
前野 マンガの場合は絵があるので、そうした絵の雰囲気に自分のお芝居をどう合わせようかなというのは意識しますね。単純にキャラクターの容姿もそうですが、人と人との物理的な距離感もわかりますから、そういう意味で演じやすい点はあると思います。逆に小説は絵がないぶん、想像で補う部分が非常に多くて、声のイメージもマンガ以上に人によって様々だと思うので、難しいけれど想像の幅が広がる楽しみもあります。
――原作の人気が高ければ高いほどファンや周囲の期待値も上がりますが、そうした点でプレッシャーを感じることはありますか?
前野 それは当然あります。それこそ『図書館戦争』のときなんて僕はまったくの無名で、「そんな大事な役を無名の声優にやらせていいのか」というご意見もたくさん聞こえましたから、プレッシャーは非常にありました。収録が始まるまではずっと不安で、正直、次の日がくるのが怖いような毎日でした。
――どのようにしてそのプレッシャーを乗り越えたのでしょうか。
前野 原作者の有川先生が「あなたで間違いない」と太鼓判を押してくださったことが大きかったです。その言葉が一番自信になりました。
普段はミーハーな買い方が多いです
――普段はどういうときに本を読むことが多いですか?
前野 移動中やお風呂ですね。本にはよくないんでしょうけど(笑)。普段は気軽に読めるぶんマンガを手に取ることのほうが多いのですが、近頃は声優の仕事をやらせていただくなかで自分を高めていくことを考えるようになって、自己啓発的な本を読む機会も増えました。最近読んだ本では、『超訳 ニーチェの言葉』やサッカー日本代表の長谷部誠選手が書かれた『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』が印象に残っています。
――マンガではいかがですか?
前野 最近購入したなかでは鳥山明先生の『銀河パトロール ジャコ』ですね。この作品は『DRAGON BALL』と少しだけリンクしていて、最後で悟空の出生の秘密のようなものがチラッと明かされるんです。完結から20年近く経ったいま、『DRAGON BALL』について新しい発見があるのはうれしいんですけど、悟空の出生については伏せたままでいてほしかったなっていう気持ちもあり…。
――作品を愛するが故の複雑なファン心理ですね。ちなみに、『DRAGON BALL』以外で繰り返し読んでいるマンガはありますか?
前野 『DRAGON BALL』以外ですか(笑)。そうすると…『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(秋本治)は小学生の頃から繰り返し読んでいます。『こち亀』は1話完結の読切スタイルなので、どこからでも読めるのがうれしいんですよ。あとは『DEATH NOTE』(原作:大場つぐみ 作画:小畑健)もわりと頻繁に読んでいます。お互いに二手先、三手先を読みながら繰り広げられる心理戦がおもしろくて。もしも自分がデスノートを手に入れたらどうするかを想像するのも楽しいですね。目の前でたばこをポイ捨てされたりすると、いまデスノートを持ってたらこの人の名前を書いちゃうな、なんて思うことがあります(笑)。
――前野さんはお姉様がいらっしゃるということですが、お仕事に関係なく少女マンガを読んだことは?
前野 少女マンガも読んでいましたよ。姉が結婚するときは、「マンガは持っていけないからあげる」といわれて、『こどものおもちゃ』(小花美穂)をもらったこともありました。だから仕事で少女マンガが原作の作品に携わらせていただくときも、書店で普通にコミックスを買っています。
――プライベートではどのようなきっかけで新しい本を手に取ることが多いのでしょうか。
前野 書店でタイトルを見ておもしろそうだなと思った本をインターネットで調べ、レビューが高評価だから買ってみようとか、逆に低評価で気になるから買ってみようとか。ミーハーな買い方が多いです(笑)。あとは有川浩先生や宗田理先生など、いいなと思った作品を書かれた方の新作は気になりますね。
――ここ数年でもっともハマった本を教えてください。
前野 ハマったというか、買ってその日に読み終えたのは『29歳の誕生日、あと1年で死のうと決めた。』(葉山アマリ)です。書店でその本を見かけたとき、ちょうど自分も30歳前後だったもので、どういう内容なんだろうと思って購入したんです。そうしたらすごくおもしろくて、喫茶店で一気に読み切ってしまいました。一応ノンフィクションなんですけど、まるで物語のようなんですよ。派遣切りに親の介護にと、人生のどん底にいる女性が主人公なんですが、ある日、ケーキを食べようとしてイチゴを床に落とした瞬間、自分は何やってるんだろうと考えて、死ぬことを思いつくんです。それで、どうせ死ぬなら一発大きなことをやってから死のうと思って、ラスベガスで勝負するために軍資金の150万円を貯めていく。その過程で少しずつ成長していく主人公の姿に感動しました。
――過程のドラマもそうですが、結末が特に気になる作品ですね。この企画ではみなさんに「○○なときに読みたい本」を教えていただいているのですが、前野さんはどのようなテーマでご紹介いただけますでしょうか。
前野 ゲームを楽しみたいときに読みたい本。これが、先ほど申し上げた久美沙織先生の『小説ドラゴンクエストⅤ』です。『ドラクエⅤ』は結婚したり子どもができたりっていう、人生を体験できる壮大なストーリーなんですが、小説版もすごく忠実に書かれていて。三部作になっていて、全巻通して楽しめる作品です。
――シリーズの中でも『Ⅴ』が特にお気に入りなんですね。
前野 はい。小説版は主人公の名前がリュカというんですが、久美沙織先生の小説を読んで以降、『ドラクエ』シリーズをプレイするときは主人公の名前をリュカにするくらい、影響を受けています。
――ご自身と同年代の男性におすすめしたい本も教えてください。
前野 先ほど挙げた長谷部選手の本はおすすめです。スポーツ選手のメンタルを知る機会はそうないですし、人間というのはこういう精神で物事に臨むべきなんだな、と非常に勉強になります。長谷部選手も僕と年齢が近いんですが、同年代でここまでしっかりされている方もいるんだなと驚きました。だからこそ、僕と同年代の男性には読んでみてほしいです。
――実生活の中で何か取り入れたり参考にされたりしていることはありますか?
前野 一番はオンとオフの切り替えの大切さでしょうか。リラックスするときはしっかりリラックスしよう、と。ほかにも、ある程度の年齢になったら身の回りのものをそれなりの質で揃えたほうがいい、というのも参考になりました。僕は精神年齢が高校生くらいのまま止まっているので、このままじゃいけないんだなと気付かせてもらいました(笑)。
――声優というお仕事には感性の若さも大切なのではとも思いますが、台本を読んだりVTRチェックをしたりと、ご自宅で作業をされることも多いでしょうから、オンとオフの切り替えは難しそうです。
前野 家でやるべきことが多いのは確かですね。だから僕は、すべての作業が終わるまでは絶対にお風呂に入らないと決めています。服を脱いでお風呂に入るとオフモードになってしまうので、作業が終わるまでは着替えもせず帰宅したままの格好で画面に向かっています。部屋着になることがオフに切り替わるきっかけなのかもしれません。
――マイルールがあれば切り替えやすいかもしれませんね。それでは最後に、前野さんにとっての読書の楽しみを聞かせてください。
前野 やっぱり自分のなかで自由にイメージすることができるのは楽しいですよね。これは僕の仕事柄かもしれませんけど、このキャラクターはきっとこういう声なんだろうな、こういうニュアンスでしゃべるんだろうな、と自分の頭のなかで想像する楽しみがあると思います。それに、似たような言葉でも書いた方によって様々な表現の仕方があるので、「なるほどこういう表現もあるんだな」と、勉強になることが多いのも読書の魅力だと思います。
――貴重なお話をありがとうございました。
DRAGON BALL モノクロ版 1
作者:鳥山明 出版社:集英社
DRAGON BALL モノクロ版 1

山奥に住む怪力で、メチャクチャ元気な孫悟空。ある日悟空は、七つ揃うとどんな願いも叶うという、ドラゴンボールを探すブルマに出会う。彼女とともに、悟空もハラハラドキドキの旅へ出発する!

DRAGON BALL モノクロ版 1
NARUTO―ナルト― モノクロ版 1
作者:岸本斉史 出版社:集英社
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弱虫ペダル 1
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DEATH NOTE モノクロ版 1
作者:大場つぐみ 小畑健 出版社:集英社
DEATH NOTE モノクロ版 1

このノートに名前を書かれた人間は死ぬ…。死神 リュークが人間界に落とした一冊のノート「DEATH NOTE」。ここから、二人の選ばれし者「夜神月」と「L」の壮絶な戦いが始まる!! かつてないスリルとサスペンス!!

DEATH NOTE モノクロ版 1
心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣
作者:長谷部誠 出版社:幻冬舎
心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣

心は鍛えるものではなく、「整える」もの。安定した心を装備することで、常に安定した力と結果を出せる。チームで干されても腐らずにレギュラーを奪い返した。ワールドカップ予選では主将としてチームを束ね、本戦への切符を掴んだ。結果を出し続ける長谷部だからこそ、多くの読者の胸を打つ。誰もが実践&応用できるメンタル術。

心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣

前野智昭さんからのメッセージ

世界にはいろいろな書籍がありますが、それらがドラマCDやアニメーションなどになったとき、少しでも多くの作品に「声」で携わることができるよう、読書を通して表現の引き出しを増やし、役者として成長していきたいと思っております。これからも応援していただけたらうれしいです。

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